相続人に自分の遺産を相続させたくないとき
寒いので朝は布団から出たくないのですが、これは私だけではないと思っている坂口です、こんにちは。
2月は相続登記月間ですが、それに先んじて相続に関するお話です。
推定相続人の廃除とは
民法に次のような定めがあります。
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
廃除とは、虐待や重大な侮辱、その他著しい非行があったときは、相続人としての資格を丸ごと取り上げてしまうことです。
ただし「遺留分を有」しない兄弟姉妹が推定相続人のときは、廃除できません。
これは、遺留分のない兄弟姉妹については、遺言で相続させないとすることで済んでしまうからです。
ちなみに廃除は生前廃除と遺言廃除があります。いずれにしても家庭裁判所に請求する必要があるため、必ず廃除が認められるとは限らないことに注意を要します。
廃除原因
遺留分を含め相続人としての資格を剥奪することができるため、廃除するためには相応の原因が必要となります。
推定相続人が勤務先会社の金員総額5億数千万円を業務上横領した罪等により懲役5年の判決を受け服役した場合事例において廃除原因と認められませんでした。
(東京高裁昭和59年10月18日決定)
もちろん認められた事例も多数ありますが、その判断基準は次のとおりです。
推定相続人の廃除は,相続的協同関係が破壊され,又は破壊される可能性がある場合に,そのことを理由に遺留分権を有する推定相続人の相続権を奪う制度であるから,民法892条所定の廃除事由は,客観的かつ社会通念に照らし,推定相続人の遺留分を否定することが正当であると判断される程度に重大なものでなければならないと解すべきである。
(神戸家裁伊丹支部平成20年10月17日審判)
つまり非行の原因が被相続人にある場合は、非行が一時的なものである場合には廃除原因にあたらないと判断されることが多いと考えられます。
廃除の効果と問題点
効果は廃除した人とされた人との間だけにとどまります(相対効)。
廃除された人と他の親族との関係では相続資格を失うということはありません。
また廃除された人に子供がいるときは、その子供が代襲相続によって廃除された相続分を手にすることができます。
折角廃除したにも関わらず、代襲相続で子供が遺産(の一部)を手にしてしまっては結局廃除した意味がないということにもなりかねません。
こういったときは、遺言で相続分を0または少なくするといった方法も検討することになります。
遺留分を侵害するような遺言はできないのですが、その相続人が生前贈与を受けているなどの場合は遺留分侵害とならないケースも考えられるからです。
さいごに
希望を叶えるための方法が1つとは限りません。
それぞれの状況に応じて手段を選ぶことが大切ですね。