賃貸借と敷金トラブル~経年変化(経年劣化)について
新年度になりました。
日本は新年(1月)と新年度(4月)の二つがあるため、一年の経過が早く感じられる気がします。私だけかもしれませんが。
原状回復義務と経年変化(経年劣化)
今回は経年劣化についてご紹介します。
具体的には総務省のガイドライン次の部分の解説です。
経年変化・通常損耗は必ず前提になっており、経年変化・通常損耗の分は、賃借人は賃料として支払ってきているところで、賃借人が明け渡し時に負担すべき費用にならないはずである。したがって、このような分まで賃借人が明け渡しに際して負担しなければならないとすると、経年変化・通常損耗の分が賃貸借契約期間中と明け渡し時とで二重に評価されることになるため、賃貸人と賃借人間の費用負担の配分について合理性を欠くことになる。
「形あるものいつかは壊れる」なんていう格言もあります。
どんなに丁寧に扱っていても自然と物は劣化していくのに、それを引き払うとき借主に負担させるのは酷だよねということです。
そこで、借りていた期間に応じて借主の負担を減らそうというのが、この「経過年数による考え方の導入(経年劣化考慮)」です。
具体的には、耐用年数経過時に残存簿価1円まで償却されます。
残存価値の償却例
カーペット
償却年数は6年で残存価値1円となるような直線(または曲線)を描いて経過年数により賃借人の負担を決定することになります。
年数が経つほど賃借人の負担割合は減少することになり、6年以上使われていたのであれば、その価値は1円にすぎないということです。
そして、入居時に新品ではなかった場合、経過年数のグラフそのものが下方修正されることになるため、耐用年数が6年のものであっても6年未満で価値が1円にまで下がります。
フローリング
フローリングは部分補修ということが馴染まない(部分的に補修することは少ないし、将来的に全体を張り替えることになる)という性質があります。
そこで、フローリングの部分補修についてはこの経年劣化を考えないということになります。
ただし、全体的に傷つけているといった理由でフローリング全体を張り替えた場合には経年劣化を考慮します。
注意義務との関係
どうせ経年劣化するからといって、荒っぽい使い方などをしたことにより(善管注意義務違反 前回記事参照)修理や工事をしなければならないときは、借主が費用負担をしなければなりません。
節度を持った使い方をしなければならないということですね。
次回最終回は、より具体例を増やした解説をします。