司法書士と財産管理業務について
台風により車の運転を控えた方がいいと判断したため、一部業務を明日に先送りした坂口です。
事務所に籠ってできる業務や後見関係でどうしても出先へ赴かなければならない内容についてはこなしました。
司法書士と財産管理業務
サイトのアクセス解析をしたところ、財産管理で検索をかけていらっしゃる方が一定数いるので取り上げることにしました。
業務として扱うことができるかどうか
司法書士法第29条
(業務の範囲)
第二十九条 司法書士法人は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行うほか、定款で定めるところにより、次に掲げる業務を行うことができる。
一 法令等に基づきすべての司法書士が行うことができるものとして法務省令で定める業務の全部又は一部
二 (略)
2 (略)
法人の業務範囲に関する規定ですが、「すべての司法書士」とあるため、法人に限定されません。
司法書士法施行規則第31条
(司法書士法人の業務の範囲)
第三十一条 法第二十九条第一項第一号 の法務省令で定める業務は、次の各号に掲げるものとする。
一 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務
二 (略)
三 (略)
四 (略)
五 法第三条第一項第一号 から第五号 まで及び前各号に掲げる業務に附帯し、又は密接に関連する業務
5号については、付随する内容のみならず、「密接に関連する」内容についても業務であるとされています。つまり密接に関連する内容であれば付随ではなく独立した業務も範囲内となります。
この2つの規定により、財産管理も司法書士の業務範囲内にあるといえます。
ただし、弁護士法第72条との関係から、事件性(紛争性)がないものに限られます。
具体的な財産管理業務の内容について
主な財産管理業務の具体例は次のようになります。
遺産(相続財産)の管理・承継
- 不動産や預貯金、株式、投資信託などに関する名義変更手続き
- 名義変更までの財産管理
- 遺言執行者のサポート
遺産分割協議書なども作成することができますが、相続人間の調整といったことをすることはできません。
揉めている場合に家庭裁判所へ調停を申し立てることは可能ですが、弁護士と異なり代理人になることはできません。
身体的理由などによる財産管理
主に任意後見契約とセットで契約締結をすることが多いと思われますが、判断能力がしっかりしている場合でも身体が不自由であるなどの理由から、以下のような内容についての財産管理を行うことができます。
- 金融機関の口座管理
- 施設利用料などの支払い
- 賃貸不動産管理 など
任意売却
不動産の任意売却(いわゆる「任売」)についても財産管理業務の一環です。
しかし、配分表の作成において担保権の順位どおりではなく配分等を任意に決めたり弁済額について減額交渉等を行うことは債務整理における裁判外和解交渉であり、簡裁代理権の範囲を超えることになります。
また、司法書士は宅建業法上の資格をも有していない限り不動産の仲介業務を行うことはできません。
留意点
制度上、財産管理を行う司法書士が監督を受ける仕組みがありません。
定期的な報告義務を委任契約書に盛り込むといった委任側の監督権行使方法の確保と明確化や公正証書による契約締結が望ましいと考えます。
また、本人の判断能力が低下してきているという場合には、成年後見制度を採用するべきです。