任意後見と法定後見の優先順位
台風が過ぎ去り一気に肌寒くなったように感じる坂口です、こんばんは。
当事務所は目立った被害はありませんでしたが、被害に遭われた方はこの場を借りてお見舞い申し上げます。
任意後見と法定後見
先日公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートの研修を受けました。
その資料も参考に綴っています。
任意後見・法定後見とは
【任意後見】
自己決定の尊重という観点から、「任意後見契約に関する法律」によって規律される民法上の委任契約の一類型です。
つまり、判断能力が低下した場合には「自分で決めた」事務範囲(たとえば財産管理として預貯金の管理など)を「自分で決めた」人に代わりになって行ってもらう(委任する)制度で、契約によって成立します。
(この契約は公正証書で結ぶ必要があります)
【法定後見】
民法で規定された要件に該当する場合に、家庭裁判所へ申立てることによって後見人(または保佐人・補助人)をつける制度です。
(法律上規定されているため、「任意後見」に対して「法定後見」と呼ばれます)
※詳しい内容については、当事務所のサイトをご参照ください。
追って、こちらのブログにも詳細を記載する予定です。
競合する場合
任意後見契約と法定後見が競合する場合はどちらが優先されるのでしょうか。
原則として、任意後見契約が優先します。
これは自己決定の尊重という理念からも導かれますが、次の条文からも導かれると考えられます。
任意後見法第10条(後見、保佐及び補助との関係)
任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のために特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができる。
(2項3項省略)
任意後見契約の登記とありますが、これは任意後見契約は公正証書で結ぶ必要があり、公証人はそのことを登記します。
したがって、任意後見契約が締結されたことが登記されるわけです。
さて、赤字で強調しましたが、この条文の反対解釈として任意後見契約が締結されている場合は、本人の利益のために必要がない場合は後見開始の審判等をすることができないということになります。
つまりこの条文からも任意後見契約が法定後見よりも優先されると考えられます。
おわりに
任意後見と法定後見のどちらが優れているかということを論じることは、意味がありません。
それぞれにメリット・デメリットがあるからです。
ご自身にとってどちらを選択したほうが良いのかは、一概に言えません。
それぞれのメリット・デメリットをしっかり把握したうえで選択することをおすすめします。