司法書士のつぶやき

愛知県春日井市(勝川)の司法書士が日々の業務を通じて感じていることや、ニュースその他の雑感を綴っています。

懲戒解雇とは

キツネの石像を破壊するなど私は怖くてできない坂口です、こんにちは。
祟られそう。

懲戒処分としての有効性

とある企業への潜入取材と解雇についてニュースになっていますね。懲戒解雇ではないとのことですが、そもそも懲戒解雇とはどのようなものなのでしょうか。

懲戒解雇とは、普通解雇とは別に分類される解雇のことで、有効性について検討する枠組みが大きく異なります。今回はその検討内容などについてのご紹介です。

懲戒解雇処分の要件

  • 懲戒事由を基礎づける事実が存在したか
  • 就業規則等に、該当する懲戒事由および懲戒処分が規定されているか
    懲戒解雇を行うには就業規則(または懲戒規定などの就業規則に付随する規定)に懲戒処分を基礎づける事由、懲戒の種類・程度が定められている必要があります。
    この規定がない場合は、そもそも懲戒解雇処分ができません。
  • 当該懲戒事由に基づいて懲戒解雇することが客観的に合理的といえるか
    懲戒解雇の規定があったとしても客観的合理的理由が必要です。
    不明確な規定がされていても合理的な限定解釈がなされることになります。
  • 懲戒解雇が相当といえるか
    懲戒解雇は懲戒処分の中でも一番重たい処分です。
    上記客観的合理的であるとしても、勤務実績等を考慮して相当性があるか検討されます。
  • 適切な懲戒手続きを経たか
    就業規則や労働協定の規約になくても組合との協議や懲戒委員会の協議といった弁明の機会を経る必要があります。
    手続的な相当性を欠いているときは、懲戒権の濫用として処分が無効とされることがあります。

実務的な解雇

懲戒解雇には厳格な審査や手続きが存在します。そこで、実質的には懲戒処分ではあるものの、普通解雇として整理されることがあります。
これは、裁判において懲戒解雇は無効としながらも、普通解雇の意思表示としての解釈をしたうえで普通解雇としては有効と判断することがあるからです。ただし、必ずこう解釈されるとは限りません。

東京地裁平成12年(ワ)13855号

懲戒解雇の意思表示が行われた場合において、使用者が懲戒解雇の要件は満たさないとしても、当該労働者との雇用関係を解消したいとの意思を有しており、懲戒解雇に至る経緯に照らして、使用者が予備的に普通解雇の意思表示をしたものと認定できる場合は、懲戒解雇の意思表示に予備的に普通解雇の意思表示が内包されていると認めることができる。
即時解雇(労働基準法20条ただし書)の要件は満たさないが、会社は即時解雇に固執する意思ではないと認められるから、解雇通知後30日間の期間の経過により効力を生ずるとした事例

浦和地裁平成8年(ワ)第764号

度重なる遅刻やお茶入れを拒否したことなど一四点を理由とする懲戒解雇が権利の濫用であるとされた事例
懲戒解雇の意思表示が無効である場合、これを普通解雇の意思表示に転換することは許されないとされた事例

(WestlawJAPANより一部抜粋引用)

さいごに

懲戒解雇処分を行うためには、厳格な要件が必要となります。
また、懲戒処分の場合には解雇予告手当が不要との規定はありません。
即時解雇というものもありますが、事前に所轄労働基準監督署長による解雇予告除外認定を受ける必要があります。

解雇処分を行う側においては処分が適法かどうかを慎重に判断する必要があり、処分される側においては争うことができるかどうかを検討することになります。

解雇処分についてご不明な点があればお近くの弁護士または法テラスにご相談ください。
司法書士は解雇処分のみについての争い(地位確認等請求事件や労働審判事件)については本人訴訟として裁判書類作成のみ行うことができます。