司法書士のつぶやき

愛知県春日井市(勝川)の司法書士が日々の業務を通じて感じていることや、ニュースその他の雑感を綴っています。

遺産分割協議と遠隔地

かなりの期間ブログの更新をしていなかった坂口です、こんにちは。
前回の記事にあった武蔵くんは5月19日に撫でられながら旅立ちました。最後はすごく穏やかな顔だったことが救いです。
そして、おそらくその翌日くらいに生まれた仔猫を縁があって迎えています。武蔵くん同様保護された子です。

現在生後1か月半くらいですが、かなりやんちゃで甘えん坊。私の体がジャングルジムみたいになるので生傷が絶えません。

遠いところに住んでいる相続人と遺産分割協議書

相続で名義変更などをしようと思っているのに、相続人が別々に遠いところで暮らしているケースはよくあることです。
そして名義変更をする際は遺言があるときは別ですが、遺産分割協議書が必要となります。

郵送回数とリスク

話し合いはまとまっているから署名捺印は問題ないけれども、1枚の紙に全員分を集めるとなると郵送であっち行ってこっち行ってと時間を要します。
郵送費や署名箇所の間違い、紛失などのリスクもその分高くなってしまうことになりますが、これは仕方のないことなのでしょうか。

土地や建物の名義変更

法務局に提出する遺産分割協議書については、次のような取扱いとなっています。

同一内容の遺産分割協議書を共同相続人の数だけ作成し、共同相続人各自がそれぞれ各別に署名、押印した場合でも登記は受理される。(登研170号100頁)

つまり、協議書の内容が同一であれば複数枚作成し相続人それぞれが署名捺印したものを集めたときに、結果として相続人全員分の署名捺印がそろえば相続登記可能ということです。

注意点

あくまで「同一内容」です。一部についてのみ加筆や修正を行ったものでは相続登記ができないこともありますので、注意が必要です。

また、金融機関に対する払い戻し手続きについては、所定の用紙に全員分の捺印が必要となるケースがあるため、このような場合には結局持ち回りを行う以上遺産分割協議書も複数枚の併せ技ではなく1枚に署名捺印を行うほうが無難です。

 

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伝染性猫腹膜炎

おはようございます。
長い間このブログを放置していましたが、色々ありました。

年度末はバタバタしていたのですが、ようやく落ち着いたところで武蔵の調子が悪くなりました。
お腹も出で居たので病院に連れて行ったところ、何回かの検査で伝染性猫腹膜炎に罹患していることが判明。

かなり絶望的な病気とのことで覚悟を決めていたのですが、薬のおかげか腹水はかなり抜けましたし(物理的に抜くことはしていません)、食欲も戻っています。

完治はまず望めないものの、このまま低空飛行でもいいから長生きして欲しいです。

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また、以前のように定期的にブログ記事を投稿したいところです(希望的観測

新しい家族を迎えました

最近バタバタしていて更新をすっぽかしていた坂口です、おはようございます。

ネコに癒される日々

タイトルですが結婚のご報告ではありません。

保護ネコと暮らす

近所のペットショップさん(現在は物販とトリミングが中心で販売をしていません)と仲良くさせていただいているのですが、そこから野良猫(捨て猫)がスーパー周辺にいるという情報を教えてくださいました。

ネコ好きでネコと暮らしたいと思ってはいたのですが、購入ではなく保護ネコをと思っていたので、現地で確認して保護することに決めました。

名前をどうしようか

オスなのですが、どういう名前にしようか考えていたけれどもなかなか思い浮かびません。
しかし、事務員の井上くんが「この顔は武蔵だな」ということで武蔵に決定。
強そうな名前になりました。

物件探し

それまで住んでいたところはペット飼育禁止だったため、事務所から近くで手ごろな物件を見つけ、今月1日に引っ越し。
広さ変わらずペット飼育可で家賃が下がるという願ったりかなったりのところを見つけられて良かったです。

ペットショップと事務所の往復

保護してからしばらくはペットショップさんに預けていました。
そこで猫用品を揃えてからは事務所との往復をはじめ、先日部屋が片付いたので月曜日から一緒に生活しています。

現在では私と一緒に出勤退勤。

事務所の顔

ネコが苦手な方もいらっしゃるため来客時はケージに入れているのですが、普段は事務所の偵察と道を歩いている方々への愛想を振りまいております。

また、ネコ好きな方の了解を得てケージから出してあげると、お客様にも愛想を振りまくという優秀さ。
みなさん笑顔でお帰りになるのを見ている私も笑顔になってしまいます。

おわりに

仕事が立て込んでいても彼が癒してくれるので、頑張ろうという気力が湧いてきます。
武蔵ともどもご来所お待ちしております。

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相続人に自分の遺産を相続させたくないとき

寒いので朝は布団から出たくないのですが、これは私だけではないと思っている坂口です、こんにちは。

2月は相続登記月間ですが、それに先んじて相続に関するお話です。

推定相続人の廃除とは

民法に次のような定めがあります。

(推定相続人の廃除)
第八百九十二条  遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条  被相続人遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

廃除とは、虐待や重大な侮辱、その他著しい非行があったときは、相続人としての資格を丸ごと取り上げてしまうことです。

ただし「遺留分を有」しない兄弟姉妹が推定相続人のときは、廃除できません。

これは、遺留分のない兄弟姉妹については、遺言で相続させないとすることで済んでしまうからです。

ちなみに廃除は生前廃除と遺言廃除があります。いずれにしても家庭裁判所に請求する必要があるため、必ず廃除が認められるとは限らないことに注意を要します。

廃除原因

遺留分を含め相続人としての資格を剥奪することができるため、廃除するためには相応の原因が必要となります。

推定相続人が勤務先会社の金員総額5億数千万円を業務上横領した罪等により懲役5年の判決を受け服役した場合事例において廃除原因と認められませんでした。
(東京高裁昭和59年10月18日決定)

もちろん認められた事例も多数ありますが、その判断基準は次のとおりです。

推定相続人の廃除は,相続的協同関係が破壊され,又は破壊される可能性がある場合に,そのことを理由に遺留分権を有する推定相続人の相続権を奪う制度であるから,民法892条所定の廃除事由は,客観的かつ社会通念に照らし,推定相続人の遺留分を否定することが正当であると判断される程度に重大なものでなければならないと解すべきである。
神戸家裁伊丹支部平成20年10月17日審判)

つまり非行の原因が被相続人にある場合は、非行が一時的なものである場合には廃除原因にあたらないと判断されることが多いと考えられます。

廃除の効果と問題点

効果は廃除した人とされた人との間だけにとどまります(相対効)。
廃除された人と他の親族との関係では相続資格を失うということはありません。

また廃除された人に子供がいるときは、その子供が代襲相続によって廃除された相続分を手にすることができます。

折角廃除したにも関わらず、代襲相続で子供が遺産(の一部)を手にしてしまっては結局廃除した意味がないということにもなりかねません。

こういったときは、遺言で相続分を0または少なくするといった方法も検討することになります。
遺留分を侵害するような遺言はできないのですが、その相続人が生前贈与を受けているなどの場合は遺留分侵害とならないケースも考えられるからです。

さいごに

希望を叶えるための方法が1つとは限りません。
それぞれの状況に応じて手段を選ぶことが大切ですね。

会社設立と成立年月日

寒い。

すいません、あまりの寒さで単語のみの冒頭となってしまった坂口です、こんにちは。

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会社を作ったよと言える日付

新しく会社を立ち上げたとき、どのタイミングから対外的にしっかりと設立したということを言えるのでしょうか。

会社成立の要件(会社の誕生日)

法律上、会社設立はどう定められているのかというと設立の登記となっています。

会社法
(株式会社の成立)
第四十九条  株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。

つまり、設立の登記がされてはじめて対外的に会社ができましたと胸を張っていえることになります。
具体的には設立登記申請を行った日です。

登記までは設立準備段階となるため、たとえば会社名義の口座をつくることはできません。
(実務上、法人口座を作るためには会社の定款だけではなく会社の謄本も要求されます)

設立登記申請書

この登記を法務局に申請することになるのですが、自分で申請する(本人申請)ことは可能なのでしょうか。

結論は可能です。

不備があったりすると法務局から電話がかかってきて補正しなければいけないため、慣れていないときは何度も足を運ぶことになるとは思うのですが、本人申請は何ら問題ありません。

ただし場合によっては申請却下・取下げとなることもあるため、会社設立日がズレてしまうことも考慮しておく必要があります。

いわゆる非司行為

では、誰かに申請書を作成してもらった場合はどうなのでしょうか。

有償無償にかかわらず業として法務局へ提出する書類を作成することは、司法書士法違反となります。
この業としてというのは、反復継続してと考えていただければ問題ありません。

他士業の方もインターネット上で設立について案内を出しているのをよく目にします。

登記申請のみ司法書士に依頼するというパターンが多いのですが、司法書士へ依頼することなく申請書を作成して本人申請を行っているところもあるというのを耳にしたことがあります。

このような本人申請のときは、何かあれば法務局から電話がかかってきますし、取下げなどのときは責任を負ってはくれないことになります。

違法行為に加担しないために、書類の中に司法書士への委任状があるかないかをご確認ください。
仮に委任状に署名捺印したとしても、その委任先が司法書士ではなく個人のときも原則アウトです。

ワンストップサービスでやってくれるからそれでもいいやと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そのようなことをしている事務所等は他にも違法行為を行っている可能性があり、それに加担しているという意識をもっていただけたら幸いです。

さいごに

少々堅苦しいことを記載していますが、法律は遵守すべきものです。
自戒の念を込めて書かせていただいたことをご理解ください。

 

時間外労働と管理監督者

成人の日が1月15日とはならないんですよね。
少々さびしく感じる坂口です、こんにちは。

以前に懲戒解雇について記事にしましたが、今回は割増賃金と管理監督者についてです。

管理監督者とは

時間外労働をしたとしても管理監督者は割増賃金を請求することができないと労働基準法に規定されています。

(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条  この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一  別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二  事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三  監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの


別表第一 (第三十三条、第四十条、第四十一条、第五十六条、第六十一条関係)
一ないし五(略)
六 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
七 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
八号以下略

 

では、この管理監督者とはどのような人のことを指すのでしょうか。

法規上直ちに明確ではなく、実質的に判断されることになります(昭22.9.13発基17、昭和63.3.14・発基150)

この実質的判断の基準は次のとおりとなっています。

人事権

一定の範囲で人事権を持っていることが必要です。

課長や部長といった役職は人事評価をすることもあって管理職と言われることが多いです。

しかし、人事評価権限のみでは人事権限である採用や解雇の権限を持っているとはいえないため、管理監督者ではありません。

経営権

店長などは店の権限を任されています。採用などの人事権も持っていることが大半です。したがって管理監督者のように思われるかもしれません。

しかし商品の選択や販売方法、販売価格を本社が決めているときは、店長は経営側ではなくその指揮命令に従う役職であって管理監督者とはいえないことになります。

先の人事権も含めて、経営とどれだけ一体となっているかが重要なポイントです。

名ばかり役職・名ばかり経営者は実質において経営側とはいえません。

待遇

会社内での待遇も判断基準です。

地位にふさわしい賃金や役職手当、ボーナスの支給であるかどうかも管理監督者かどうかを判断する重要な要素となります。

割増賃金の請求の可否

たしかに労働基準法において管理監督者は割増賃金を請求できません。

しかし、管理監督者というためには経営側の人間であることが要求されます。一般的に課長や部長には採用や解雇といった人事権限はありませんし、本社の指揮命令に従うしかない店長も経営側とはいえません。

つまり時間外労働に対する割増賃金を請求できることになります。

もちろん請求できることと、請求することは別問題です。
請求してしまったがために、会社にいづらくなってしまうことも考えられます。場合によっては不当解雇される可能性も否定できません。

それぞれの事情を総合的に判断する必要があるということです。

また、今回は触れていませんが、管理監督者以外にも割増賃金の適用を受けられないケースがあります。

労働に関する困りごとがあるときは弁護士または司法書士に相談してみてはいかがでしょうか。
市の無料相談会や法テラスを利用するという方法もあることを覚えておくだけでも違うと思います。

プレゼントと贈与

クリスマスの翌日ともなると、インターネットオークションやフリーマーケットなどでプレゼントと思しき品が出品されているのを目の当たりにすると、なんとも言えない気持ちになってしまう坂口です、こんにちは。

そういえば無線LANケーブルなんてものも売っているそうですが、有線なのか無線なのかさっぱりわかりませんね。

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プレゼントについて

一般的にプレゼントは対価を要求するものではありません。
つまり贈与契約です。

こういってしまうと大げさだなと感じてしまいますが、これも立派な契約となります。

書面と契約

契約というと書面を交わすイメージが強いかもしれませんが、法律上書面を要求していないものも多数あります。

贈与契約も書面を必要とはしていません。

では契約書を交わしたときは何か違いが生まれるのでしょうか?

実は、大きな違いがあり、民法に次のように定められています。

(書面によらない贈与の撤回)
第五百五十条  書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

つまり、書面による贈与の場合は一方的に撤回することができないということです。

贈与と撤回

書面にしていない口約束だけの贈与は、
「あげるって言ったけど、気が変わったからあげない」
と言うのは問題はありません。

しかし、但書きのところに注意が必要です

履行の終わった部分については、この限りでない。」

これは、一般的なプレゼントである動産の場合、引渡しを意味します。

プレゼントを相手方に贈ってしまうと、この履行が終わったことを意味するので、一方的な撤回はできません。

負担付贈与とは

「あげる代わりに○○をやってくれ」

これは貰うだけではなく義務がくっついているもので、単純な贈与ではなく負担付贈与と言います。

(負担付贈与)
第五百五十三条  負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。

法律上、贈与と負担付贈与は区別されているため、貰った側が義務を果たすまで拒むこと(同時履行の抗弁権)や義務を果たさないときには解除することができるという点で、贈与と異なります。

※ただし、解除については無制限に認められるわけではないことに注意

税金について

プレゼントが贈与であるなら、当然贈与税も関係してきます。

個人からもらった香典・花輪代・年末年始の贈答・祝物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるものについては非課税なので、一般的に税金が課されるケースは少ないと思いますが、絶対ないとは言い切れません。

以下に国税庁の贈与税に関するページをリンクしておきますので、気になる方はご参照ください。

贈与と税金|贈与税|国税庁

また、貰ったプレゼントを売却する場合は贈与税よりも身近に課税対象となることがあります。

バレなければいいなんて考えないようにしましょう。

税金については専門家である税理士から具体的なアドバイスをいただくようにお願いします。

有限会社って今は設立できないけれども

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いきなり冒頭に4コマ漫画をもってきた坂口です、こんにちは。
こういう緩さも大事だと思うんですよね。

有限会社法って今でもあるの?

平成18年に会社法が施行されると同時に、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(会社整備法)第1条第3号によって有限会社法は廃止されました。
新しく有限会社を設立することはできなくなっていますが、世の中にはまだまだ有限会社はたくさんあります。

有限会社法が廃止されているのに、これって大丈夫なの?

会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(整備法)

会社整備法の第2節に有限会社に関する経過措置が規定されています。
たとえば

第2条

前条第三号の規定による廃止前の有限会社法(以下「旧有限会社法」という。)の規定による有限会社であってこの法律の施行の際現に存するもの(以下「旧有限会社」という。)は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後は、この節の定めるところにより、会社法(平成十七年法律第八十六号)の規定による株式会社として存続するものとする
2  前項の場合においては、旧有限会社の定款、社員持分及び出資一口を、それぞれ同項の規定により存続する株式会社の定款、株主株式及び一株みなす
3  第一項の規定により存続する株式会社の施行日における発行可能株式総数及び発行済株式の総数は、同項の旧有限会社の資本の総額を当該旧有限会社の出資一口の金額で除して得た数とする。

第3条(商号に関する特則)

前条第一項の規定により存続する株式会社は、会社法第六条第二項の規定にかかわらず、その商号中に有限会社という文字を用いなければならない
2  前項の規定によりその商号中に有限会社という文字を用いる前条第一項の規定により存続する株式会社(以下「特例有限会社」という。)は、その商号中に特例有限会社である株式会社以外の株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

第3項以下省略

このように、色々と読み替えをすることになっています。

どうして整備法があるのか

日本にある会社の大多数は有限会社でした。

もしも会社法施行にあわせて強制的に定款変更をしなさいとしてしまうと、現場の混乱は必至です。
法務局もパンクしてしまうため、商業登記がストップしてしまうことでしょう。

このような事態を避けるために、整備法で各種みなし規定を設けたわけです。

株式会社と有限会社

有限会社は株式会社とみなされています。
基本的には手続きなど株式会社と同じものとなります。

しかし、旧有限会社法の規定などについても読み替えで適用するところがあるため、株式会社と同一の手続きですべてを行えるというわけではありません。

整備法をしっかりと把握しておかないと、今の(特例)有限会社では何ができて何ができないのかの判断を誤ってしまうことになります。

手続などについてご不明な点があった際は、司法書士に相談するようにしましょう。

 

懲戒解雇とは

キツネの石像を破壊するなど私は怖くてできない坂口です、こんにちは。
祟られそう。

懲戒処分としての有効性

とある企業への潜入取材と解雇についてニュースになっていますね。懲戒解雇ではないとのことですが、そもそも懲戒解雇とはどのようなものなのでしょうか。

懲戒解雇とは、普通解雇とは別に分類される解雇のことで、有効性について検討する枠組みが大きく異なります。今回はその検討内容などについてのご紹介です。

懲戒解雇処分の要件

  • 懲戒事由を基礎づける事実が存在したか
  • 就業規則等に、該当する懲戒事由および懲戒処分が規定されているか
    懲戒解雇を行うには就業規則(または懲戒規定などの就業規則に付随する規定)に懲戒処分を基礎づける事由、懲戒の種類・程度が定められている必要があります。
    この規定がない場合は、そもそも懲戒解雇処分ができません。
  • 当該懲戒事由に基づいて懲戒解雇することが客観的に合理的といえるか
    懲戒解雇の規定があったとしても客観的合理的理由が必要です。
    不明確な規定がされていても合理的な限定解釈がなされることになります。
  • 懲戒解雇が相当といえるか
    懲戒解雇は懲戒処分の中でも一番重たい処分です。
    上記客観的合理的であるとしても、勤務実績等を考慮して相当性があるか検討されます。
  • 適切な懲戒手続きを経たか
    就業規則や労働協定の規約になくても組合との協議や懲戒委員会の協議といった弁明の機会を経る必要があります。
    手続的な相当性を欠いているときは、懲戒権の濫用として処分が無効とされることがあります。

実務的な解雇

懲戒解雇には厳格な審査や手続きが存在します。そこで、実質的には懲戒処分ではあるものの、普通解雇として整理されることがあります。
これは、裁判において懲戒解雇は無効としながらも、普通解雇の意思表示としての解釈をしたうえで普通解雇としては有効と判断することがあるからです。ただし、必ずこう解釈されるとは限りません。

東京地裁平成12年(ワ)13855号

懲戒解雇の意思表示が行われた場合において、使用者が懲戒解雇の要件は満たさないとしても、当該労働者との雇用関係を解消したいとの意思を有しており、懲戒解雇に至る経緯に照らして、使用者が予備的に普通解雇の意思表示をしたものと認定できる場合は、懲戒解雇の意思表示に予備的に普通解雇の意思表示が内包されていると認めることができる。
即時解雇(労働基準法20条ただし書)の要件は満たさないが、会社は即時解雇に固執する意思ではないと認められるから、解雇通知後30日間の期間の経過により効力を生ずるとした事例

浦和地裁平成8年(ワ)第764号

度重なる遅刻やお茶入れを拒否したことなど一四点を理由とする懲戒解雇が権利の濫用であるとされた事例
懲戒解雇の意思表示が無効である場合、これを普通解雇の意思表示に転換することは許されないとされた事例

(WestlawJAPANより一部抜粋引用)

さいごに

懲戒解雇処分を行うためには、厳格な要件が必要となります。
また、懲戒処分の場合には解雇予告手当が不要との規定はありません。
即時解雇というものもありますが、事前に所轄労働基準監督署長による解雇予告除外認定を受ける必要があります。

解雇処分を行う側においては処分が適法かどうかを慎重に判断する必要があり、処分される側においては争うことができるかどうかを検討することになります。

解雇処分についてご不明な点があればお近くの弁護士または法テラスにご相談ください。
司法書士は解雇処分のみについての争い(地位確認等請求事件や労働審判事件)については本人訴訟として裁判書類作成のみ行うことができます。